彼「今日はすごくキレイだね」
彼女「今日“も”でしょ〜!怒」
……こんな会話、どこかで聞き覚えはありませんか?たった一文字なのに、「は」を使うか「も」を使うかで大きくニュアンスが異なるのは、日本語の面白いところですね。
今回は、このように単語をつなげる働きをする「てにをは」の基本と、きれいな日本語を使うために気をつけたいポイントをご紹介します。
目次
「てにをは」とは?
文章を書いたり直したりするときに、「『てにをは』に気をつける」などと聞いたことある人は多いでしょう。「てにをは」とは一般には日本語の助詞のことを指します。
「てにをは」の由来

「てにをは」は、漢文を読むときに補助的に付けられる「ヲコト点」を由来しています。漢字の四隅に付けた点を左下から時計回りで順番に「て・に・を・は」と読むことから、いまでは日本語の助詞のことを全般的に「てにをは」と呼ぶようになりました。
「てにをは」の種類
実は「てにをは」には、多くの種類があります。
- 格助詞 (が、を、に、の、へ、と、より、から、にて、して)など
- 接続助詞 (ば、とも、ど、ども、が、に、を、て、して、で、ながら、ものを)など
- 副助詞 (すら、し、のみ、ばかり、など、まで)など
- 係助詞 (は、も、でも、しか、さえ、こそ)など
- 終助詞 (な、に、とも、の、か)など
優れた小説家などは、作品の中で助詞を巧みに使い分け、細かいニュアンスを上手に伝えています。しかし、一般の人がこれだけの助詞を全て覚えて完璧に使いこなすのは至難の技ですよね。
そこで、次より、現代でもよく使われる助詞の中でも特に気をつけたいものをピックアップしてご紹介します。
綺麗な日本語を使える人は、品格が上がって周りからの良いイメージに繋がります。ぜひ使えるものからマネしてみてください。
「を」を上手に使える人は品格が上がる

例えば、お蕎麦屋さんで食券を買い、カウンターで注文します。そのとき、「そばとうどん、どちらになさいますか?」と聞かれたら、あなたはどう答えますか?
うどんでお願いします。
うどんをお願いします。
「〜で」という表現を使う人はかなり多いのではないでしょうか。本人としては、遠慮して、丁寧に、控えめにという意味合いで使っているのだと思います。
しかし、受け取り手によっては、「〜で」という言うと、「まあ、これでいいよ」というやや上から目線の印象を与えかねません。
これを、「〜を」に変えるだけで、あいまいさがなくなり、より自分の意思がストレートに伝わりますね。
「〜から」と「〜より」の使い分け
起点を表す「から」と「より」

10時から始まります。
10時より始まります。
上記の例は、どちらも間違いではないので、好みで使い分ければ良いでしょう。このように、物事の起点を表す格助詞の「から」と「より」は、上記のようにどちらも同じ意味合いを持つ場合があります。
もし、ワンランクアップの文章力を身に付けたいのであれば、以下にご紹介する「から」と「より」の効果的な使い分け方を覚えておいて損はないでしょう。
歴史的にみると、「から」と比べ、「より」の方が古くからある言葉のようです。「より」は、やや文語的でかしこまった印象を与えるため、ニュースや論文にもよく使われます。また、商談やプレゼンなどで権威性を持たせたいときに、あえて「より」を使ってみるのもおすすめです。一方、日常的な話し言葉の場合は「から」が使われることが多いですね。
比較を表す「より」に注意

「より」には、起点を表す表現とともに、「◯◯より△△」というような比較を表す表現があります。そのため、使い方によっては誤解を生んでしまう悪文になりかねません。
AKBグループより勢いのある新人グループがデビューします。
例えば、上の文では、”AKBグループよりも勢いがあるグループがデビューする”のか、”AKBグループの中から勢いのある新人がデビューする”のかわかりませんね。
今回の旅行は、東京より大阪を経由して沖縄に向かおうと思う
この文では、
- 旅行のスタート地点が東京である場合
- 旅行のスタート地点が別の地点である場合(東京経由よりも大阪経由で行こうと思っている場合)
の2パターンが考えられます。
前者の場合は、「より」を「から」に置き換えると良いでしょう。後者の場合は「東京より」を削除してしまえば問題ないですね。
意外と難しい「は」と「が」の使い分け

「てにをは」で悩む代表格に、「は」と「が」の使い分けがあります。
一見難しそうな「は」と「が」の使い分けですが、ひとつのルールさえ覚えておけば迷うことはありません。
- 「は」→助詞以降を強調する
- 「が」→助詞以前を強調する
具体例で見てみましょう。次の2つの文をご覧ください。
私は社長の山田です。
私が社長の山田です。
前者が強調したいのは「社長」という部分です。後者が強調したいのは「私」ですね。
さらに、もうひとつ。
田中さんは駅に着きました。
田中さんが駅に着きました。
前者は「“駅に”着いた」ことを説明しているのに対し、後者は「“田中さんが”着いた」ことを説明しています。
簡単ですね。「は」と「が」で悩んだら、助詞の前か後どちらを強調したいのかで使い分けましょう。
「が・が文」「の・の文」に注意

ひとつの文章に「が」や「の」が連続してしまうことって、よくありますよね。このような文章は、意味としてはわかるものの、稚拙な印象を与えてしまうことがあります。
「が・が文」の例
部長が先方に出向いたが、担当者が不在だった。
ひとつの文に「が」が3つ出てきています。この場合は「部長が先方に出向いたが、担当者は不在だった。」にすると収まりが良いですね。
友達が行ったのが東京大学だが私が行ったのは京都大学だ。
こちらも意味は通じますが、がーがーうるさい感じを受けます。そんな時は思い切って2つの文に区切ることも検討してみましょう。この例では、「友達は東京大学に行った。私が行ったのは京都大学だ。」のように表現できます。
「の・の」文の例
千葉の支社の課長の渡辺さんの奥さんの手作りです。
単語を繋げるのに「の」は非常に便利なので、気づかぬうちに多用している人は少なくありません。上の例は少々極端にしていますが、これに近い文は実は多いものです。
すっきりさせるなら、「千葉支社にいる課長の渡辺さんの奥さんが手作りしたものです。」のように、「の」をなくしたり別の言い方にするように工夫しましょう。
「が・が文」「の・の文」は、文章を書き慣れていない人はもちろん、ライターを生業にしている人でもやってしまいがちです。目安としては、ひとつの文の中に同じ助詞が3つ続いたら危険サインと思ってください。いずれかの助詞を言い換えるようにすると、読みやすく理解しやすい文章になります。
助詞をマスターして文章力アップ!
これまで見てきたように、「てにをは」をきちんと使えないと、自分の思いが間違って伝わってしまう可能性が高まります。それほど日本語はたった1文字が重要なのです。
一方で、適切に助詞を使いこなせる人からは、自然と品がにじみ出てきます。美しい日本語を使う第一歩として、普段の会話やメールなどでも、ぜひ「てにをは」を意識して使ってみてください。