企業が広告を打つとき、一番気になるのは「要は、いくらかけて、いくら儲かったの?」ということですよね。
このような考え方を「費用対効果」といい、Web広告では費用対効果を測定するために「ROAS」や「ROI」「CPA」といった指標が用いられます。この3つの言葉は混同して考えられがちですが、それぞれ役割が異なりますので、改めて確認していきましょう。
目次
ROAS・ROI・CPAの違い
この3つはどれも広告効果の指標となる数値ですが、計算方法や使われ方に違いがあります。
ざっくりいうと……
- ROASは広告から得た”売上”を測る指標
- ROIは広告から得た”利益”を測る指標
- CPAはコンバージョン1件獲得するのにかかる費用
となります。それぞれ詳しくみていきましょう。
ROASは広告から得た”売上”を測る指標
ROASとは、「Return On Advertising Spend」の略で、広告費をかけた結果いくら売上が上がったのかを表す指標です。「ロアス」と読みます。
ROASは、以下のように算出することができます。
ROAS=広告経由の売上÷広告費用×100(%)
例えば、広告費が100万円、それによる売上が500万円の場合、
500万円÷100万円×100
→ROASは500%となります。
ROAS 500%とは、つまり、広告費1円あたり5円の売上が上がっている状態です。
ROASが高い広告キャンペーンほど、企業の売上に貢献していると考えられ、ROASが低い広告キャンペーンは改善の余地があるか、予算を少なくすることを検討する必要があります。このように、ROASは主に広告戦略の方向性を決めるために使われているのです。
ただし、ROASは売上だけを見て算出している数値のため、実際に利益が出ているのかどうかは、次のROIで判断することになります。
ROIは広告から得た”利益”を測る指標
ROIとは、「Return On Investment」の略で、広告費をかけた結果いくら利益が出たのかを表す指標です。「アール・オー・アイ」と読みます。
ROIは、以下のように算出することができます。
ROI=(広告経由の売上ー商品原価ー広告費用)÷広告費用×100(%)
広告費が100万円、それによる売上が500万円、商品原価が250万円だった場合、
(500万円ー250万円ー100万円)÷100万円×100
→ ROIは150%となります。
または、ROIは次のようにも計算できます。
(平均利益単価×コンバージョン数-広告費用)÷広告費用×100(%)
広告費を100万円かけて、1個6,000円の利益が出る商品を500個販売した場合、
(6,000円×500−100万円)÷100万円×100
→ ROIは200%となります。
ROIは、プラスの場合は黒字、マイナスの場合は赤字です。ROASが数百%であっても、ROIがマイナス数値だった場合は、その広告は利益が出ていないことがわかります。
CPAはコンバージョン1件獲得するのにかかる費用
ROASと混同されやすいもののもうひとつとして、CPAが挙げられます。
CPAとは、「Cost Per Acquisition」または「Cost Per Action」の略で、広告コンバージョンの獲得単価を表します。「シー・ピー・エー」と読みます。
CPAは、以下のように算出することができます。
CPA=広告費用÷コンバージョン数
広告費が100万円、コンバージョン数が500件の場合、
100万円÷500
→ CPAは2,000円となります。
Web広告のコンバージョンは、そのまま売上になるものもあれば、会員登録や資料請求、無料アプリダウンロードなど、直接売上につながらないものもあるでしょう。CPAは、このように「コンバージョン=売上」とはならない事業の広告で参考にするべき数値といえます。
獲得単価であるCPAは、もちろん数値が低ければ低いほど良いですよね。しかし、いくらのCPAが適切なのかは、その広告キャンペーンや事業によって大きく異なるので一概には言えません。資料請求から成約するまでの成約率と購買単価を考えて逆算するなど、事業モデルを加味して目標値を設定してみてください。
事例で見るROAS・ROI・CPA
ある企業で行われたリスティング広告を想定した以下の表をご覧ください(パソコン推奨)。ROAS、ROI、CPAの違いを一覧で比較してみましょう。
キャンペーン | 広告費 | CV数 | CPA | 売上 | 利益 (売上ー商品原価) | ROAS | ROI |
---|---|---|---|---|---|---|---|
商品A | 100万 | 500 | 2,000円 | 250万 | 85万 | 250% | -15% |
商品B | 50万 | 250 | 2,000円 | 70万 | 30万 | 140% | -40% |
商品C | 30万 | 300 | 1,000円 | 114万 | 65万 | 380% | 117% |
商品Aは、もっとも広告費が高く売上もあげています。しかし、ROIがマイナスになっているため、単体で考えると赤字になってしまっています。
商品Cを見てみましょう。商品Cはもっとも広告費が少ないものの、CPAも低く、ROASやROIでもプラスになっています。商品Bの効果があまり良くないので、もしかしたら、予算を商品Cにより多く振り分けるとより効果が見込めるかもしれません。
部分最適ばかりで短期的な判断にならないように注意!
Web広告は効果がすぐに数字になって現れる分、費用対効果をより強く意識する広告といえます。そして、ROASやROI、CPAなどは、広告の効率を最適化するための重要な指標です。しかし、費用対効果がわかりやすい分、気をつけなければならない点もあります。それは、部分最適ばかりに終始して視野を狭めてしまうことです。
例えば、ROIを意識しすぎるあまり、利益の取れる商品の広告のみに予算を集中させ、長期的に育てたいサービスを置き去りにするなど、中長期的な目線が持てずに失敗する事業は少なくありません。また、とにかくCPAを低く抑えることばかりを考え、結果的に広告費用が消化しきれていなかったり、潜在顧客へアプローチできなくなっているところもあります。
Web広告を実施するときは、単月の数字だけにとらわれず、少し長い期間で数値の変化を注視してみたり、LTVも含めた戦略的な考えをもって挑んでいくと良いでしょう。
まとめ
ROASやROI、CPAなどは、広告効果を判断するのにとても役立つ指標です。事業や商品の特性によってどの指標を採用するのかを決め、広告運用の改善を図っていきましょう。