マーケティングに携わるなら知っておくべき「セグメンテーション」の基本とやり方、成功事例をご紹介します。
目次
セグメンテーションとは
セグメンテーションとは、「市場を細分化すること」。マーケティング戦略において、自社の商品やサービスを販売するターゲット顧客層を定めるために、市場や顧客グループを小さく切り分けて分類する方法です。
まだ物が少なかった大量生産・大量消費の時代のマス・マーケティングでは、「どのようにして売り込むか」という売り手側の手法自体が重要視されてきました。しかし、消費者のニーズが多様化し、それぞれのニーズに応えられる商品・サービスが増えてくるにつれ、従来のマーケティングの効果が薄まってきます。そこで、従来の「どのようにして売り込むか」ということに加え、「誰に、何を売るか」というセグメンテーションの考え方が広がってきたのです。
企業の競争が激しさを増しているいま、セグメンテーションは企業が生き残っていくために必須のマーケティング活動ともいえるでしょう。
セグメンテーションとターゲティング・ポジショニングの違い

マーケティング戦略の基本ステップの考え方の中に「STP分析」というフレームワークがあります。これは、「セグメンテーション(Segmentation)」「ターゲティング(Targeting)」「ポジショニング(Positioning)」の3つの頭文字をとっており、商品を売るための戦略の根幹となる部分でもあります。
この3つは、次のような順番で分析を行っていきます。
- セグメンテーション:市場を細分化する
- ターゲティング:集中的に販売する市場を定める
- ポジショニング:他社では替え難い、自社独自のポジションを定める
STP分析の中で、セグメンテーションは最重要項目となります。セグメンテーションで正しく市場を分けられなければ、そのあとのステップは全く見当違いなものになってしまうでしょう。
では、正しく市場を分けるためには、どのようなことが必要なのでしょうか。次からセグメンテーションの具体的なやり方をご紹介します。
セグメンテーションの4つの変数
市場や顧客を分ける手法は実にさまざま。ここでは、代表的な分け方(変数)を4つご紹介します。
地理的変数(ジオグラフィック変数)
その名の通り、主に地域などで市場を細分化する方法です。
国や市区町村のほか、政令指定都市や人口規模などで切り分けることもあります。
人口動態変数(デモグラフィック変数)
年齢や性別、世帯所得や職業などで市場を細分化する方法です。
デモグラフィック変数は、消費者の購買行動と密接に繋がっていることが多く、セグメンテーションに最もよく使われる変数です。
心理的変数(サイコグラフィック変数)
消費者の心理的環境に焦点を当て、市場を細分化する方法です。
例えば、デモグラフィック変数では同じ属性とされる「20代後半の女性」でも、ブランドものが好きな人もいれば、ファストファッションしか着ないという人もいるでしょう。
サイコグラフィック変数は、このように人の興味・関心や人間性により迫ったセグメンテーションをする手法です。慎重派か大胆な性格か、社交的か内向的か、新しいもの好きか伝統を重んじるかなど、より人間の感覚や感性のようなもので分類していきます。
行動変数
曜日や時間、購入頻度、1回目の利用者と2回目の利用者など、消費者の行動の傾向によって市場を細分化する方法です。
インターネットの普及や技術の進化によって、近年ではより詳細な行動変数が取れるようになってきており、セグメンテーションにも有効な変数とされています。
正しいセグメンテーションができているか「4R」でチェック
セグメンテーションは、さまざまな視点から市場を細分化していくため、細かく切り分けようと思ったらいくらでも出来てしまいます。その分、どのように細分化するのが自社にとって効果的なのか正解が見つけにくく、無駄な作業が発生する可能性も高くなるでしょう。
そこで、セグメンテーションを行うときには、次の「4つのR」を確認しながら取り組むことをおすすめします。
Rank(優先順位)
Realistic(規模の有効性)
Reach(到達可能性)
Response(測定可能性)
- セグメンテーションした市場(セグメント)を、重要度によってランク付けします。重要度は企業の経営戦略によって変わります。
- 自社にとってぴったりと思えるセグメントを見つけたとしても、市場規模が小さすぎては商売になりません。そのセグメントで十分収益を上げることができるのか、市場の規模を確認しましょう。
- そのセグメントには、自社の商品やサービスを容易に届けることができるでしょうか。例えば、外国であれば言語の壁がありますし、離島などであれば流通を考慮しなければなりません。しかし、難易度が高いセグメントで自社の優位性が発揮できることもあります。
- そのセグメントの反応が測定できるかどうか検討します。効果測定しやすいセグメントには、マーケティング戦略が実行しやすいといえます。
効果的なセグメンテーションで成功した企業事例3つ
最後に、有効なセグメンテーションを行い、ポジションを築くことに成功した商品の実例をご紹介します。実際にセグメンテーションを行う際の参考にしてみてください。
シーブリーズ

デオドラント商品の「シーブリーズ」は、効果的なセグメンテーションの代表的な成功事例のひとつです。
実は、シーブリーズは日本での販売だけでも50年以上の歴史のある老舗ブランドです。もともとは、20〜30代のマリンスポーツをする男性に支持されていた商品でしたが、支持層だった人の年齢が上がってきたことや、そもそもマリンスポーツをしに海に行く人が減り、それに伴って売り上げも低迷していた時期がありました。
そこで、販売元である資生堂は、市場をマリンスポーツをする20〜30代男性から、女子高生へと切り替え、戦略を見直します。実際に、今をときめく若手俳優さんが出演する爽やかなCMを目にしたことのある人も多いでしょう。
売り上げはV時回復し、なんと低迷期だった2007年からたった1年で約8倍にも成長させたようです。
JINS SCREEN PCメガネ

おしゃれなメガネを低価格で販売する「JINS」。何を隠そう、筆者もお世話になっているブランドです。
JINSから発売された「JINS SCREEN」は、従来の視力矯正用のメガネという概念を覆し、「パソコンを長時間使用する人の目の負担を軽減させる」という画期的なメガネでした。
コンタクトレンズやレーシックなど、視力矯正の方法も多様化しており、メガネ業界は低迷を続けている業界でもあります。
そこでJINSは、1990年代後半から急速に広がってきたパソコンで仕事をする人や、近年のスマホの普及などに目をつけ、ブルーライトをカットするメガネを開発。普段メガネを使わない人もターゲットにするという荒技を見事成功させ、市場を一気に広げました。
ワークウェアスーツ

スーツに見える作業着として一躍注目を浴びているのが、株式会社オアシスライフが発売した「ワークウェアスーツ」です。
これまでのスーツは、ホワイトカラーのビジネスマンのみに限定されていました。ここに目をつけて開発されたワークウェアスーツは、スーツを「働く人の洋服」と再定義し誕生したユニークな商品です。
水道工事の現場作業着から生まれたというスーツは、機能性とデザイン性を兼ね備えており、2018年3月の発売開始からものすごい勢いで成長。さまざまなメディアにも取り上げられ、売り上げ目標の5倍を達成するまでになったそうです。
セグメンテーションは事業成功のカギ
業界の状況や事業構造は、時代とともに変化していくものです。従来の常識とされているものを改めて見つめなおし、セグメンテーションを効果的に行うことで、これまでにない成功があなたの元へやってくるかもしれません。今自分はどのセグメンテーションにいるのかを定期的に意識しながら、勝てる事業ドメインを見つけていきたいものです。